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“保護者参加型”の通信が人の輪を広げる~中野 敏治(全国教育交流会「やまびこ会」代表)

保護者に読んでもらえる学級通信をつくるためには何が必要なのでしょうか。私は校務の場で配られる学級通信には、「教育的価値がなければならない」と考えています。行事予定や連絡中心の内容では、学級通信を出す意味がありません。紙一枚の中に教育的価値を見出し、学級通信を通じて、子どもも保護者も、そして教師も育っていくことができればと願っています。その思いがあれば学級通信の内容も言葉も、重みが出てくるはずです。

学級通信を読んでもらうためのアプローチを考える

内容を考える前にまず考えておきたいことは、「どうすれば保護者が学級通信を“意識”してくれるか」ということです。学級通信の発行が不定期であったり保護者に届かなかったりすれば、保護者の学級通信に対する関心は薄らいでいきます。そこで私は、次の二つのことを試みました。

一つは、学級通信専用のWebサイトを立ち上げたことです。サイトに発行した学級通信を随時掲載し、バックナンバーのダウンロードやメールでの意見交換をできるようにしました。もう一つは、専用の携帯サイトをつくったことです。これは保護者が通勤電車の中でも、学級通信の内容項目を把握できるようにすることで、学級通信に意識を向けてもらおうとしたのです。いつでも「見たいときに見ることができる工夫」をしていったのです。

ただし、これらのサイトはあくまで補助的なものに過ぎません。パソコンがない家庭や携帯電話を常時使わない保護者もいるので、学級通信は紙面での発行が基本であることを忘れてはなりません。インターネット上での公開は、個人情報保護の観点から制約も多いため、携帯サイトでは項目のみを載せ、内容は紙面を読んでもらうようにしました。大切なのは、保護者に「学級通信に対する意識を持ってもらうこと」「学級通信が身近なものであることに気付いてもらうこと」なのです。

このような方法を考えたのは、私が30歳前後のときに経験したある苦い出来事が背景にあります。当時、勤務していた学校は生徒の問題行動が目立ち、私は状況を改善したい一心で、学級通信を通じて「本音で語り合いましょう」と保護者に向けてメッセージを発しました。すると保護者の一人から、「先生こそ本音で語っていないのでは」との返事があったのです。正直ショックでした。そのときから私は「保護者が何を求めているのか、親の視点に立って考える」ことを意識するようになりました。

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学級通信は“歴史の缶詰”

ポイント① 学級便りを書くことでヒマになる!?クリックで拡大

現在、私の学校では全クラスが学級通信を発行しています。私は、読ませていただいた1年分の通信を年度末に学級ごとに製本し、担任にお礼を兼ねてプレゼントしました。先生方は大変喜び、より学級通信づくりに力を注ぐようになってくれました。

学級通信を作成する上では、“保存性”を考えてフォーマットを決めることをお勧めします。例えば、紙の端に最低18㎜の余白を残します。そうすることで、パンチで学級通信に穴を開けても本文にかぶるのを防ぐことができます。また、私の場合、可読性を意識して、文字サイズは11ポイントにしました。字の間隔が広がり読みやすくなるほか、高齢の方や子どもが読む場合にも負担をかけずに済みます。

長く書きためられた学級通信は、いわば「学級の歴史が詰まった缶詰」です。子どもたちの思い出とともに、きっと教師自身のかけがえのない財産になるでしょう。

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子どもと保護者と教師の姿が見える通信づくり-3つの構成ポイント-

では、保護者の心に残る学級通信を作成するためには、具体的にどのような方法が考えられるでしょうか。定期的なコーナーを設けるのは確かに有効ですが、一方でマンネリ化や事務的な印象を与えかねません。ポイントは、「自分一人ですべて考えようとしないこと」です。私が意識していたのは、「子どもや保護者と共に作り上げる学級通信」です。

(1)子どもたちの“生活日記”を通して保護者に学校や生徒の様子を伝える

ポイント② 子どもたちの日記は、全員必ず同じ回数は載せるようにするクリックで拡大

私は担任を受け持っていたとき、子どもたちが“生活日記”に書いた文章を了解をもらった上で、週に一度、学級通信で紹介していました。こうした手法は子どもたちの自信につながるだけでなく、保護者に学校や生徒の様子を伝える上でも抜群の効果を発揮しました。親が興味を持って読んでくれるのは、やはりわが子のこと。事務的な連絡で済ますよりも、親しみを持って学校生活を理解してもらえるでしょう。

(2)保護者から意見・感想をいただく

ポイント③ 紙面に感想を直接書き込めるスペースを設けるクリックで拡大

学級通信の多くは、教師から保護者へ一方通行的に“呼びかけ”や“連絡”をしていますが、保護者の多くは教師への意見や疑問なども多く持っています。そこで私は、学級通信には必ず「おたよりをおまちしております」との呼びかけを載せていました。とはいえ、漠然と意見を募集しても「何を書けばよいのかわからない」と言う方も多いので、時には“テーマ”を設けることもポイントです。今までで一番盛り上がったのは川柳。子どもが書いた川柳に親が川柳で答えるといった形で、紙面が賑わいました。

(3)道徳の授業内容や社会的問題についても全員で考えてみる

ポイント④ 授業内容に関連する記事を転載することで、学習効果がUP!クリックで拡大

道徳の授業で子どもたちが気付いたことや感じたことなども、積極的に載せるようにしていました。同時に授業で使用した資料も載せることで(ただし掲載が許されるものに限る)、保護者にも授業の様子が伝わり、一緒に考えてもらうことができました。

それから著作権に配慮しつつ、子どもたちの生活にかかわる新聞記事も転載しました。驚くことに、保護者の方から新聞記事を提供してくれることもありました。紙面を通じて子ども・保護者・教師が、同じ問題について考え、意見を述べ合う。ここにも学級通信の教育的価値があるように思います。

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学級通信で人の輪が広がっていく

学級通信「あすなろ」クリックで拡大

煩雑な校務に追われる中、学級通信の作成は後回しにされがちです。しかし真心を込めた分だけ、子どもや保護者との距離は確実に近くなっていきます。私は学級通信を通してたくさんのドラマが生まれました。例えば、保護者からたくさんの意見や感想をもらえるようになりました。また、保護者からの提案で、マイカップ持参の懇談会なども開かれ、保護者同士が互いにアドバイスし合うなど、学級通信を通じて連帯感も強まっていきました。

何より嬉しかったのは、3年間担任を務めた子どもたちの保護者が、それまでに発行した学級通信をすべてきれいに保存していてくれたことです。さらに嬉しいことに、その3年分の学級通信を幾人かの保護者が集まって手作業で製本してくださり、卒業式のとき私にプレゼントしてくれました。この冊子は、学級通信が保護者のものになった証であると同時に、今でも私の最高の宝物です。

略歴

中野 敏治(なかの としはる)

中野 敏治(なかの としはる)

公立中学校教諭、市町村教育委員会指導主事を経て、現在公立中学校教頭。全国教育交流会「やまびこ会」代表、日本教育ペンクラブ員、教育新聞社外研究員、元読売新聞教育相談員等も務める。主な著書に『この一言で子どもが伸びた』(学事出版・2008)がある。また、『小六教育技術』(小学館)、『月刊生徒指導』(学事出版)、『月刊HR』(学事出版)、教育新聞等にも執筆歴を持つ。現在、やまびこ会において、季刊誌『YPC(やまびこ会ペンクラブ誌)』を発行しているほか、個人通信『かけはし』も発行中。個人通信の読者は、教育関係者以外にも、企業経営者、作家、音楽家にまで及び、幅広い分野から支持を得ている。

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